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2026-27シーズンのアーセナルウィメンは、開幕前の期待とは対照的に厳しいスタートを切っています。
WSLでは開幕戦のブライトン戦に1-0で勝利したものの、その後は4試合勝利なし。第4節チェルシー戦、第5節マンチェスター・シティ戦とタイトルを争うライバルに連敗し、5試合終了時点で1勝2分2敗、勝ち点5。首位マンチェスター・シティとの差は10ポイントまで広がりました。
一方、UWCLではHBキューゲに1-0で勝利し、パリFCとは2-2。2試合で1勝1分と無敗ではありますが、パリFC戦では2点のリードを守れず追いつかれるなど、WSLと共通する課題も見えています。
現在のアーセナルは、本当に「弱くなった」のでしょうか。
この記事では、ここまでの試合結果、攻撃面のデータ、ゲームマネジメント、選手ごとの出場時間などを振り返りながら、シーズン序盤に苦戦している原因を考えていきます。
1. 数字で見る26-27シーズン序盤のアーセナル
ここまでの公式戦7試合では2勝3分2敗となっています。
| 大会 | 対戦相手 | 結果 |
|---|---|---|
| WSL第1節 | ブライトン | ○ 1-0 |
| WSL第2節 | クリスタル・パレス | △ 0-0 |
| WSL第3節 | マンチェスター・ユナイテッド | △ 1-1 |
| UWCL MD1 | HBキューゲ | ○ 1-0 |
| WSL第4節 | チェルシー | ● 0-1 |
| UWCL MD2 | パリFC | △ 2-2 |
| WSL第5節 | マンチェスター・シティ | ● 2-4 |
WSLでは5試合で4得点6失点。
結果だけを見ると守備が大きく崩壊しているというより、まず目につくのは得点数の少なさです。
ただし、試合内容を見ると「何もできずに敗れている」というわけではありません。
クリスタル・パレス戦では30本のシュートを記録しながら0-0。パリFC戦では2-0までリード。マンチェスター・シティ戦でも2度リードを奪いました。
勝利へ近づく時間帯は作れているにもかかわらず、それを最終的な結果へ変換できていない。
この部分が、現在のアーセナルを考えるうえで重要だと思います。
2. 得点力不足――「決定力」だけで説明できるのか
シーズン序盤の最大の問題として挙げられるのが得点力不足です。
マンチェスター・シティ戦を迎える前のWSL4試合で、アーセナルは78本のシュートを放ちながら得点はわずか2。
非PKのシュート決定率は2.6%で、アーセナルとしては2014年以来となる低水準でした。さらに9度のビッグチャンスを作りながら、得点に結びつけたのは1度だけです。
ここだけを見ると「決定力が悪い」と結論づけたくなります。
しかし、別の数字を見ると少し違った問題も見えてきます。
アーセナルの非PKシュート1本当たりのxGは、第4節終了時点で0.085とWSLで下から2番目。さらにシュートの35%が相手選手にブロックされており、これはリーグ最多でした。
つまり、単純に決定機を外しているだけではなく、結果として得点確率の低い状況からシュートを選ぶ場面が多くなっていることも問題だと考えられます。
特にクリスタル・パレス戦は象徴的でした。
アーセナルは30本のシュート、2.57xG、相手ペナルティエリア内で70回のタッチを記録しながら無得点に終わっています。
シュートを打つべき場面で、もう一本パスを選んでいないか
ここからは、筆者が実際に試合を見て感じている部分です。
今季のアーセナルには、シュートを積極的に狙ってもよい場面で、より良い形を求めてもう一本パスを選択してしまう場面が少なくないように感じます。
もちろん、より確実なチャンスを作ろうとすること自体は悪いことではありません。しかし、その間に相手はペナルティエリア内へ人数を戻し、シュートコースを塞ぐことができます。
最初は比較的シュートを狙いやすい状況だったにもかかわらず、
シュートを選ばず横へ展開する → 相手守備が整う → さらにパスを重ねる → 最終的に難しい体勢やコースからシュートを打つ
という流れになる場面があるように見えます。
この傾向を考えるうえで、チェルシー戦の後半に象徴的な場面がありました。
映像:Barclays Women’s Super League公式YouTube
① 69分前後:パスを重ねる間に相手の守備が整う
69分前後では、ブラックステニウスを起点に複数の選手が関わりながらペナルティエリア付近までボールを運びます。しかし、再びケリーにボールが渡った頃にはチェルシーの守備陣が戻っており、シュートはマッケイブにブロックされました。
より良い形を求めてボールを動かした結果、最終的なシュートの難易度が上がった一例にも見えます。
② 72分前後:フォードがダイレクトで打たず、好機を逃す
より象徴的だったのが72分前後の場面です。
バトレからペナルティエリア内のフォードへボールが入りますが、フォードはダイレクトシュートを選ばず、一度ボールをコントロール。その間にチェルシーの守備陣に対応する時間を与え、好機を生かすことができませんでした。
この2場面だけでアーセナルの攻撃全体を説明することはできません。また、全ての場面で早いタイミングからシュートを狙うことが正解でもありません。
ただ、第4節終了時点でシュートの35%がブロックされ、1本当たりのxGも低かったというデータは、こうした筆者の印象とも一定程度重なります。
現在のアーセナルに必要なのは単純に「シュート数を増やす」ことではなく、いつシュートを打つのかという判断の改善ではないでしょうか。
3. 得点した試合では「リードを守れない」という別の課題
マンチェスター・シティ戦では、もう一つの課題がより鮮明になりました。バウムのゴールで先制し、一度追いつかれた後にはルッソが再び勝ち越し。これまで課題だった得点を2つ奪いながら、最終的には2-4で敗れました。さらに直前のパリFC戦でも、2-0から2-2に追いつかれています。
ここで気になるのがリード後のゲームマネジメントです。
・追加点を狙って前からプレッシャーをかけ続けるのか。
・ボール保持を優先して試合のテンポを落とすのか。
・それとも守備ブロックをコンパクトにしてスペースを消すのか。
マンチェスター・シティ戦では、3点目を奪いに行くのか2-1を守るのか、チーム全体としての方向性が曖昧になったように感じました。
少なくとも筆者には、その過程で中盤にスペースが生まれ、徐々にシティへ主導権を渡してしまったように見えました。
この部分は個々の選手だけではなく、監督・コーチングスタッフにも改善を求めたいポイントです。
4. 全選手の出場時間から見るスレガース監督の起用法
スレガース監督の選手起用についても見てみます。
WSL5試合+UWCL2試合をすべてフル出場すると630分になります。
ここまでの公式戦における出場時間は以下の通りです。
| 選手 | 出場時間 | 630分に対する割合 |
|---|---|---|
| リア・ウィリアムソン | 630分 | 100.0% |
| アレッシア・ルッソ | 574分 | 91.1% |
| エミリー・フォックス | 508分 | 80.6% |
| オナ・バトレ | 508分 | 80.6% |
| ジョージア・スタンウェイ | 465分 | 73.8% |
| リサ・バウム | 453分 | 71.9% |
| マリオナ・カルデンティ | 428分 | 67.9% |
| キム・リトル | 423分 | 67.1% |
| カイラ・クーニー=クロス | 419分 | 66.5% |
| ミサ・ロドリゲス | 360分 | 57.1% |
| ステフ・キャトリー | 360分 | 57.1% |
| ロッテ・ウッベン=モイ | 270分 | 42.9% |
| アンネケ・ボルベ | 270分 | 42.9% |
| スティーナ・ブラックステニウス | 221分 | 35.1% |
| オリヴィア・スミス | 216分 | 34.3% |
| クロエ・ケリー | 207分 | 32.9% |
| ケイトリン・フォード | 200分 | 31.7% |
| スミラ・ホルムベリ | 158分 | 25.1% |
| フリーダ・マヌン | 102分 | 16.2% |
| テイラー・ハインズ | 90分 | 14.3% |
| セリーナ・チェルチ | 59分 | 9.4% |
| ジェラルディン・ロイテラー | 9分 | 1.4% |
| イザベラ・ダム | 0分 | 0% |
| エリザ・ドゥ・アルメイダ | 0分 | 0% |
※WSL第5節マンチェスター・シティ戦終了時点。
※出場時間はFBref掲載の2026-27シーズン「All Competitions」のデータを基にしています。FBrefでは一部大会についてデータ収録範囲(coverage)に制限がある旨が明記されているため、実際の公式記録と若干の差異が生じる可能性があります。
※本表は選手起用の傾向を把握するための参考値であり、公式記録そのものを示すものではありません。
この表を見る際、まず押さえておきたいのは、スレガース監督が「同じ11人だけを使い続けている」わけではないことです。
実際、マンチェスター・シティ戦前のWSL4試合では21選手を起用しており、これは当時のリーグ最多。先発メンバーにも計9回の変更を加えていました。
一方で、起用した選手の人数と、出場時間をどの程度分散できているかは別の問題です。
ウィリアムソンはここまで公式戦630分すべてに出場し、ルッソも574分と9割以上の時間でプレーしています。その一方で、チェルチは59分、ロイテラーはわずか9分です。
今夏加入した選手でも、バトレ、スタンウェイ、バウムらは早くから主力となっていますが、同じ新加入選手でも起用状況には大きな差があります。
もちろん、コンディション、負傷、戦術への適応など、外部からは分からない事情があります。
全選手へ均等に出場時間を配分する必要もありません。
それでも、複数タイトルを争うために厚くしたスカッドである以上、一部の主力がほぼフル稼働している一方、即戦力として獲得した選手にほとんど出場時間がない状況は検証する必要があるでしょう。
特に今後はWSLとUWCLの試合が続きます。
単に「ベンチに良い選手がいる」だけではなく、実戦の中でその選手たちをチームへ組み込み、主力の負担を分散していくことも必要だと思います。
5. 交代策で選手の特徴を生かせているか
出場時間だけでなく、途中交代の使い方にも改善の余地があります。
アーセナルにはブラックステニウス、スミス、フォード、チェルチなど、それぞれ異なる特徴を持った攻撃的な選手が揃っています。
しかし、今季は途中出場によって試合の攻め方そのものが大きく変わった場面がまだ多くありません。
例えばブラックステニウスの最大の武器の一つは、相手最終ラインの背後への抜け出しです。
一方、リードした相手が守備ブロックを下げ、背後のスペースを消している状況では、その特徴を生かしにくくなります。
そうした試合では、例えば、ホルムベリからのクロスとチェルチの高さを組み合わせるなど、選手交代と同時に攻撃方法を変える選択肢も考えられるでしょう。
必要なのは「誰を入れるか」だけではなく、「その選手を入れて何を変えるのか」という部分だと思います。
6. スレガース監督を解任すべきなのか?
ここまで結果が出ていない以上、スレガース監督への批判が強まるのは理解できます。ゲームマネジメントや選手起用、交代策について、改善を求めたい部分もあります。
ただ、筆者としては現時点で直ちに監督を交代すべきだとは考えていません。
現在の問題には選手個人のフィニッシュや判断も関係しており、監督交代だけですべてが解決するとは限らないからです。一方で、過去の実績だけを理由に現状を楽観視することもできません。
重要なのは、今回の代表ウィークを経てピッチ上で具体的な変化を示せるかどうかです。
攻撃のテンポ、リード後の試合運び、選手起用、交代策。代表ウィーク後も同じ問題が繰り返されるのであれば、その時には監督の進退をめぐる議論がさらに強まるでしょう。
7. まとめ|問題は「戦力不足」ではなく、戦力を結果へ変換できていないこと
今のアーセナルを見て、単純に「弱くなった」と結論づけるのはまだ早いと筆者は考えています。
むしろ問題なのは、これだけの戦力を揃えながら、それを十分に試合結果へ変換できていないことではないでしょうか。
・大量のシュートを放ちながら得点につながらない。
・リードを奪っても試合を終わらせられない。
・多くの選手を起用している一方で、実際の出場時間には大きな差がある。
それぞれ別の問題に見えますが、共通しているのはチームが持っている能力を試合結果へ最大限に反映できていないことではないでしょうか。
特に攻撃面については、単純な「決定力不足」だけではなく、シュートを打つタイミングそのものにも改善の余地があるように感じます。
より良いシュートチャンスを求め続けるあまり、結果的に相手へ守備を整える時間を与えていないか。
積極的にシュートを狙うべき瞬間と、もう一本パスをつなぐべき瞬間。その判断を改善できれば、現在の低いシュート効率にも変化が出てくるかもしれません。
シーズンはまだ序盤です。
今必要なのは、誰か一人に全ての責任を負わせることではなく、ここまでの7試合で浮かび上がった問題を一つずつ修正していくことでしょう。
代表ウィーク明け、アーセナルがどのような変化を見せるのか。
今季のタイトル争いだけでなく、今後のスレガース体制を占う意味でも、次の数試合は重要な期間になりそうです。
8.出典・参考
・UEFA公式「Women’s Champions League: 2026/27 league phase fixtures and results by team」
・Opta Analyst「Make or Break for Renée Slegers? Man City Test Awaits Under-Pressure Arsenal Boss」
・Opta Analyst「WSL Matchday 5: The Opta Stats That Defined the Weekend」